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2009/10/18

Singapore Burning -第四部 (つづき)

18 (カンパールの戦闘)
 カンパールは、東側に「カンパール・ヒル」と呼ばれる約1200メートルの丘、西側は、海岸から錫鉱山の露天掘りの廃坑が続く平野で、丘のスロープからは日本軍よりも装備、訓練において勝れた英軍の砲撃が効果を発揮する、防衛に適した地形だった。日本軍はやぶ蚊の出没する沼地から攻めなければならない。丘をまたいで、第6、第15の合併した旅団が位置につき、右翼は、ランカシャー・ヨーマンリー部隊、スコットランド義勇軍の曲射砲に支援されたグルカの3個旅団が固めた。クローコルの勇士、ムアヘッドは新品の25ポンド砲を率いてこれに加わった。
 元日明け方、河村部隊との戦闘で、マレーの1942年は始まった。カンパールの戦闘は3日間続き英軍部隊の団結心は高まった。レスターの600の兵の指揮官、第一次大戦で勲功十字章を授与されたエズモンド・モリソン中佐のエネルギーには特筆すべきものがあった。地帯によっては攻撃と反撃が繰り返され、戦線が輻輳してきた。塹壕のなかの肉弾戦も稀ではなかった。前線に食糧を届けにきたキャブの運転手、ウォーカーは、ブレン軽機関銃監視所への日本兵の侵入を目にし、たった一人の奇襲を敢行して追い払った。かれはミリタリー・メダル(殊勲章)の「即時褒賞」を受けた。
 この即時褒賞は、現地直属指揮官の裁量により、24時間以内に授与することができる。延々と手続きの続く通常の事後褒賞にくらべれば手っ取り早く、士気の向上に大いに役に立つ。チームワークを大事にする日本軍と異なり、西欧の軍隊では個人の褒賞が極めて有効なのである。ほかにもカンパールの戦いでは、砲火のなか、退路を断たれても野戦電話連絡を続けた先任曹長の、ヒューギルが、DCM(Distinguished Conduct Medal - 特別殊勲章)に輝いている。またレスターのニューランド中尉は、宣教師の息子で上海と天津で育った。英国を訪れたことのない、シンガポールの士官養成学校出身の応急将校である。正規の大隊でこれら士官の能力が疑いの目で見られたことは事実だったが、何度も孤立しながらカンパールを保持した勲功に、パーシバルはニューランドとその兵に特別賞を与えた。
 「トムソン・リッジ」と呼ばれる高地の奪回に、グルン、ジットラの生き残りによる寄せ集め大隊が、ジョン・グラハム大尉、まだ21歳のチャールズ・ラム少尉に率いられ、各々いっぱいずつのラムをひっかけ、ときの声をあげながら銃剣突撃を敢行した。ラムは即死、グラハムは戦傷を受け、作戦成功を知った上で息を引き取った。グラハムは死後、ヴィクトリア十字章を受けた。
 山下は三方向からの攻撃を決断した。一つは、タイ領に入った新たな近衛師団が、北方からサンパンと筏を使ってぺラク川を街までくだる。二番目に西から海岸沿いに上がり、上陸用舟艇で川に入り、テロック・アンスンまでさかのぼる。三つ目は、ベルナム川をさかのぼり、ウラン・メリンタンの漁村で上陸し、北方のテロック・アンスンをめざす。この作戦は松井太久郎中将の第5師団にまかされた。しかし、近衛は実戦経験なく、ほかの中国戦線のベテラン部隊も海陸両用作戦には不慣れだった。蒸気船に牽引された10艘ばかりの舟艇が、方向を間違えて砂州で立ち往生した。英軍にとって絶好な餌食となる筈だったが、攻撃に赴いた3機のブレンハイムのうち、1機は故障で引き返し、通信を傍受されたため1機は打ち落とされ、1機は追い払われた。これが海空を失った英軍の現実だった。
 こわれかかった橋のたもとで歩哨をしていたパンジャブ兵に、イギリスの農園主と思われるような、自転車に乗った一人の白人が近づいた。油断をしていたが、白人はいきなり兵隊のトムソンを奪おうとしたので射殺した。遺体を検分すると、それはドイツ人と思われた。開戦前、バンコクのイギリス公使館からは警告が出ていた。インドシナのヴィシー政権の外人部隊から脱走兵が出て、ナチス大使館と接触していると。ドイツ人政治難民、ユダヤ人技術者なども少なからずこの地域に居住している、ヨーロッパ人がすべて味方とは限らなかった。
 カンパールは死守することが目的ではなかった。援軍到着までの時間稼ぎに最大眼目があった。このためパーシバルは、兵力の温存をはかった。中隊ごとに、お互いを掩護しながら、部隊は徐々に、徐々に後退して行った。次の防衛線は、スリム川に設定された。
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