--/--/--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告
2009/06/03

Alliance ‐17 計 画

 ワシントン、ケベック
 1944年9月12-16日
ーその辺のところは全然憶えていない。   ルーズベルト


 1934年以来の財務長官、ヘンリー・モーゲンソーは、大学教授のような風貌で53歳、人望はなく、偏頭痛に悩まされていた。あだ名は「ザ・モーグ(調査部)」、ルーズベルトからは「おカネのことを知らない唯一のユダヤ人」とコメントされていた。かれは年上のハルやスティムソンの上に立とうと、つねに野心を燃やしており、同じユダヤ人の、ハリー・デクスター・ホワイトという有能な補佐官を重用していた。ホワイトはヴァイトという苗字のリトアニア難民の息子で、モーゲンソーは知らなかったが、ソ連のスパイだった。1944年7月、ニューハンプシャーのブレトンウッズで開かれた戦後の国際金融システムを形づくる国際通貨基金と国際復興銀行創立の会議で、ホワイトの率いるアメリカ・チームはジョン・メイナード・ケインズが代表するイギリス・チームを圧倒した。
 ルーズベルトはドイツ処遇問題については、ホプキンスを議長とするモーゲンソー、スティムソン、ハルの四人委員会を作って、そこに丸投げした。ルーズベルト政権では国務、財務、国防など主要省庁の対立が日常茶飯だった。ホプキンスもモーゲンソーを嫌っていた。四人委員会ではしばしば激論が戦われ、おたがいにファースト・ネームで呼び合うこともやめて、肩書きで呼ぶような場面もあった。
 モーゲンソーのプラン(計画)は、ドイツのすべての工場と設備を解体し、賠償として西側諸国に移送する。ドイツ人は国外で強制労働に服する。小学校より上級の教育機関は「一定期間」閉鎖する。ドイツの貿易と資本流入は、20年間戦勝国が管理する。東プロシアはソ連とポーランドで分割する。ザール地方はフランスに所属する。ルール地方は国際管理とする。残りのドイツは二つに分割される。グライダー含め航空機保有、軍服着用、行進は禁止するなどなどとすさまじいものだった。スティムソンは反対、ハルも国務省の縄張りに財務省が踏み込んでくることを警戒した。
 オクタゴンと名づけられた英米サミットがケベックで開かれた。このときだけ、両首脳はたがいに妻を伴った。チャーチル夫人は国内で厳しい配給対象になっているナイロン・ストッキングを購入した。チャーチルは、ヒトラー打倒のあとの英国に対する援助の継続について討議したい、と申し入れた。レンドリース2として知られるものである。レンドリースは従来国務省の所管で、国務長官のハルを怒らせたが、会談には財務省のモーゲンソーが出席して主導権を取った。チャーチルは戦後のヨーロッパの均衡維持を認識していたが、ドイツ製造業の破壊は、英国の製品市場の開放につながり、その破産状態の救済になる、という理屈でモーゲンソー・プランの受け入れがやむをえない状況となった。戦後の援助資金についてチャーチルは、「わたしに後ろ足で立たせて、ファラ(ルーズベルトの愛犬)みたいにお願いさせようというのですか?」と悲痛な皮肉を言った。
 会談のあと、ルーズベルトとチャーチルはハイドパークで原子兵器の研究成果の配分について話し合った。「熟考のもとに」日本に対して原爆を使用する見通しも語られた。備忘録は厳重に封印されていた。デンマークから入国してきた著名な核科学者、ニールス・ボーアの活動を調査すること、という一項目もそこにあった。ボーアは原子兵器の管理は世界的な協定によるべきである、と主張しており、ロシアに秘密が漏れる懸念があったのである。
 モーゲンソーとホワイトは会議の成功に有頂天になり、ケベックの文書の内容を漏洩してしまった。ワシントン・ポストは、モーゲンソーをスティムソンとハルに対する勝利者と持ち上げた。財務省はやりすぎ、という非難が巻き起こった。ウォール・ストリート・ジャーナルは、モーゲンソー・プランで3千万のドイツ人が国外に追いやられる、と報道した。ある通信社は政府内部の対立を詳細に報じた。選挙の年の政治危機を目にして、ルーズベルトは四人委員会を解散した。モーゲンソーは個人的にルーズベルトに弁明するため、自宅を訪ずれたが門前払いを食わされた。ルーズベルトはハルにメモを送り、「本当の問題点は、戦争が終わったときイギリスが破産し、ドイツが20年のうちにまた戦争を始めたりしないようにすることなのだ。しかしだれもドイツをもう一度農業国にしたいなどと思っているわけではない」と伝えた。選挙結果は、53.4%の有権者票を獲得、499対99の選挙人を手にする、というものになった。
 
スポンサーサイト
未分類 | Comments(0) | Trackback(0)
 | HOME | 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。